【2026愛知アジア大会】eスポーツ競技は9月23日開幕! 日本代表25名と国立拠点「HPSC ESPORTS LAB」が始動

7月31日、一般社団法人日本eスポーツ協会(JESU)は「HPSC ESPORTS LAB」の発表会を実施しました。日本スポーツ振興センター(JSC)が運営するハイパフォーマンススポーツセンター(HPSC)内、東京都北区の味の素ナショナルトレーニングセンター・イーストに新設された、eスポーツ選手の強化と研究のための拠点です。

日本のトップアスリートが集うナショナルトレーニングセンターに、eスポーツ専用の施設が置かれる。この一報が持つ意味は、施設の規模や設備そのものよりも、それが設置された経緯にあります。

9月23日(水・祝)、第20回アジア競技大会(2026/愛知・名古屋)のeスポーツ競技が開幕します。アジアオリンピック評議会(OCA)が主催する公式の国際総合競技大会で、eスポーツは正式なメダル競技です。日本にとっては自国開催であり、そこに派遣される日本代表25名を医科学の面から支えるために整備されたのが、このHPSC ESPORTS LABでした。

HPCS発表

味の素ナショナルトレーニングセンターに置かれたeスポーツ拠点

HPSC ESPORTS LABは、JSCとJESUの連携によって設けられました。発表会にはHPSCの久木留毅センター長、JESUの越智政人共同代表理事副会長、スポーツ庁競技スポーツ課の関口直樹課長補佐、JESU強化委員会の福田真澄副委員長が登壇しています。

施設には、選手の視線の動きを可視化するアイトラッキング(視線計測)、プレイ中の心拍計測、体表面温度の測定といった機器が導入されました。プレイ後の振り返りには、タッチペンで書き込みながら映像を分析できるツールも用意されています。いずれも従来のスポーツで蓄積されてきた医科学的なアプローチを、そのままeスポーツに持ち込んだ形です。

発表会では、アジア競技大会日本代表のTess選手(貴田英貢也、eFootball/PC)とゆうき選手(栗原悠輝、ぷよぷよeスポーツ)がデモンストレーションを行いました。久木留センター長は、事前の合宿を通じて得られた知見として、心拍数を上げてからプレイした方がパフォーマンスが向上するというデータを紹介しています。座って行う競技という印象の強いeスポーツですが、身体の状態が結果に影響するという仮説が、実測データとして示されつつあるということになります。

利用対象は当面、2026年9月のアジア競技大会に出場する選手・チームに限定されます。大会終了後は、各種世界大会に出場する日本人選手へ広く開放される予定です。JESUは、科学的根拠にもとづくトレーニングによる競技力の向上と、HPSCが長年培ってきたスポーツ医・科学・情報の知見をeスポーツ選手向けに応用することで、これまでにない選手強化を図るとしています。

アジア競技大会2026のeスポーツ競技概要

項目 内容
大会名 第20回アジア競技大会(2026/愛知・名古屋)
大会会期 2026年9月19日(土)〜10月4日(日)
eスポーツ競技日程 2026年9月23日(水・祝)〜10月2日(金)
会場 Aichi Sky Expo(愛知県国際展示場)展示ホールD
主催 アジアオリンピック評議会(OCA)
位置づけ 正式競技(メダル種目)
実施規模 11種目13タイトル
日本代表 7種目9タイトルに選手25名、コーチ4名

大会全体では45の国と地域が参加し、43競技が実施されます。日本でのアジア競技大会開催は1994年の広島大会以来、32年ぶりとなります。

eスポーツの実施タイトルは以下の11種目13タイトルです。

  • 対戦格闘団体戦(Street Fighter 6、鉄拳8、THE KING OF FIGHTERS XV)
  • ポケモンユナイト
  • PUBG Mobile Asian Games Version
  • Identity V 第五人格-Asian Games Version
  • グランツーリスモ7
  • eFootball™
  • ぷよぷよeスポーツ
  • Honor of Kings
  • League of Legends
  • Mobile Legends: Bang Bang
  • Naraka: Bladepoint

前回の杭州大会が7種目だったことを踏まえると、種目数は大きく増えています。注目すべきは日本発のタイトルの多さで、対戦格闘団体戦を構成する3タイトル、ポケモンユナイト、グランツーリスモ7、eFootball、ぷよぷよeスポーツと、13タイトル中8タイトルが日本のメーカーが手がける作品です。

競技スケジュール

JESUが6月16日に公開したスケジュールによると、各種目の実施日は以下の通りです。

実施日 時間 種目・タイトル セッション
9月23日(水・祝) 09:00〜14:00 グランツーリスモ7 グループステージ〜決勝
9月23日(水・祝) 16:00〜21:00 eFootball™ 準決勝〜決勝
9月24日(木) 10:00〜20:00 Naraka: Bladepoint 準決勝〜決勝
9月25日(金) 09:00〜21:00 対戦格闘団体戦 決勝トーナメント〜準決勝
9月26日(土) 09:00〜14:00 ぷよぷよeスポーツ 決勝トーナメント〜決勝
9月26日(土) 16:00〜20:00 対戦格闘団体戦 決勝
9月27日(日) 09:00〜20:00 ポケモンユナイト 決勝トーナメント〜決勝
9月28日(月) 09:00〜20:00 Honor of Kings 決勝トーナメント〜決勝
9月29日(火) 09:00〜20:00 PUBG Mobile 決勝
9月30日(水) 09:00〜20:00 Identity V 第五人格 決勝トーナメント〜決勝
10月1日(木) 14:00〜19:00 Mobile Legends: Bang Bang 決勝
10月2日(金) 12:00〜20:00 League of Legends 決勝

日本が出場する7種目のうち、初日の9月23日にグランツーリスモ7とeFootballが組まれています。開幕日にいきなりメダルの懸かった試合が行われる日程です。

日本代表25名

JESUは7月15日、日本代表選手の正式決定を発表しました。JESUが候補選手を選考して日本オリンピック委員会(JOC)に推薦し、JOCの認定手続きを経て確定した形です。

種目 選手(選手名/所属)
対戦格闘団体戦 樋口孝治郎(ひぐち/ZETA DIVISION)、中山大地(NOBI/Team YAMASA)、澤田彰仁(SCORE/AMATERASU GAMING)
ポケモンユナイト 鳥羽航人(b1/FENNEL)、小瀬古雄大(Mame/FENNEL)、東蓮汰(ak1/FENNEL)、髙田祥生(py1/FENNEL)、佐藤博希(piui/REJECT)、白川真士佳(Ma・sh1o/FENNEL)
PUBG MOBILE 石川知輝(REX/MAKING THE ROAD)、足立登馬(相棒最強/MAKING THE ROAD)、正田哲仙(PINE喰/MAKING THE ROAD)、田頭永伍(Garnet/MAKING THE ROAD)、大橋乃輔(Apollo/REJECT)
Identity V 第五人格 粟田勇斗(Unpyi/REJECT)、上仲真生(Katsuki/FENNEL)、神谷凌(Soba/REJECT)、小沼真澄(City/REJECT)、前田健太朗(maeken/FENNEL)、上村匡優(Aka/REJECT)、大山流陽(yukakina/Arneb with WoG)
eFootball™ 貴田英貢也(Tess/KIWOOM DRX、PC)、茶谷優我(lemon-pop/名古屋NTPOJA、モバイル)
グランツーリスモ7 國分諒汰
ぷよぷよeスポーツ 栗原悠輝(ゆうき/東京ヴェルディeスポーツ)

コーチには橋木俊平(Ax/KIWOOM DRX、eFootball)、吉浦春樹(TON・GG、ポケモンユナイト)、望月泰貴(MimoriN/REJECT、PUBG MOBILE)、三上俊希(Toki/AXIZ WAVE、Identity V)の4名が就任しています。

対戦格闘団体戦、eFootball、ぷよぷよeスポーツ、グランツーリスモ7の4種目6タイトルについては、3月21日・22日にAichi Sky Expoで開催された「ASIA esports EXPO 2026」の場で最終選考競技会が実施されました。代表の座を懸けた戦いを、本番と同じ会場で行うという形です。

所属を見ると、FENNELとREJECTがポケモンユナイトとIdentity Vを中心に多くの選手を送り出しています。国内の主要チームがそのまま代表の母体になっている構図で、クラブ単位で積み上げてきた競技力が、そのまま国の代表としての戦力に接続されている点は、日本のeスポーツの現在地を示す一つの指標といえます。

ジャカルタの金メダルから、メダルなしに終わった杭州へ

アジア競技大会でeスポーツが実施されるのは、今回で3大会目です。

最初は2018年のジャカルタ・パレンバン大会で、このときはデモンストレーション競技(公開競技)として6タイトルが採用されました。9月1日に行われた「ウイニングイレブン 2018」で、日本代表の杉村直紀選手(SOFIA)と相原翼選手(Leva)が金メダルを獲得しています。決勝のイラン戦は先に1勝を許す苦しい展開でしたが、2本目を取り返して1勝1敗に追いつき、最後は相原選手が勝ち切って逆転で優勝を決めました。アジア競技大会のeスポーツにおける、日本初のメダルでした。

続く2022年大会(新型コロナウイルスの影響で2023年に開催)の杭州大会で、eスポーツは正式競技へと昇格します。当初は8タイトルが予定されていましたが、ハースストーンがライセンスの問題で除外され、最終的には7種目での実施となりました。

このとき日本が代表を派遣したのは、League of Legends、PUBG Mobile Asian Games Version、STREET FIGHTER V CHAMPION EDITIONの3種目、選手13名です。結果は以下の通りでした。

種目 日本代表 結果
League of Legends 篠原南斗、髙井大、山崎教史、杉浦悠太、谷岡亮征、合野史哉(コーチ:青木晴彦) グループリーグ敗退(グループB 1勝1敗)
PUBG Mobile 石田将大、木村飛路、関川洸輝、渡辺優 5位(同率)
STREET FIGHTER V 川野将輝(Kawano)、林賢良(MAGO) 敗者復活トーナメント敗退

正式競技として初めて臨んだ杭州大会で、日本はメダルを獲得できませんでした。ストリートファイターVでは、国内トップクラスの実績を持つ両選手が揃って上位に残れず、カワノ選手が7位タイ、マゴ選手が9位タイという結果に終わっています。

3種目13名だった杭州から、7種目9タイトル25名へ。派遣規模はおよそ2倍になりました。自国開催という条件に加え、日本発のタイトルが8つ実施される競技構成は、単純に見れば日本にとって有利な材料です。ジャカルタ以来となるメダル、そして正式競技としては初のメダルが現実的な目標として語られる状況が整いつつあります。

HPSC ESPORTS LABが今このタイミングで整備されたことの意味も、この文脈に置くと理解しやすくなります。杭州でメダルに届かなかった経験を踏まえ、選手個人やチームの努力だけに委ねるのではなく、国のスポーツ強化の枠組みに乗せて競技力を引き上げる。そういう判断が働いたと読むことができます。

4タイトル不参加という論点

一方で、今回の日本代表編成には議論を呼んだ点があります。11種目13タイトルのうち、日本が代表を派遣しないタイトルが4つ存在することです。

派遣が見送られたのは、League of Legends、Honor of Kings、Mobile Legends: Bang Bang、Naraka: Bladepointの4タイトルです。

JESUは2月6日にこの方針を発表しました。JOCから示された「TEAM JAPAN選手団編成方針」と内示数にもとづいて選考を進め、eスポーツ競技では選手総数25名の枠を確保したものの、「11種目13タイトルすべての競技に日本代表候補選手を派遣することは断念せざるを得ませんでした」と説明しています。JESU自身も「苦渋の判断」という表現を用いました。

11種目すべてに代表を送るとすると、チーム競技が多いこともあり選手数は40名を超える計算になります。25名という枠のなかで、実績のある7種目9タイトルに戦力を集中させたというのが実態です。

とりわけ反響が大きかったのがLeague of Legendsでした。開催国が同タイトルに代表を派遣しないのは異例で、プロ選手のEvi選手がX上で「なんでなんだろ 理由知りたいですよね」と投稿するなど、競技シーンからは戸惑いの声が上がっています。杭州大会でグループリーグ敗退に終わった実績が判断に影響したとみられますが、JESUは個別タイトルを選外とした理由そのものについては公表していません。

派遣枠の総数はJOCの編成方針に沿って決まるものであり、JESUが単独で拡大できる性質のものではありません。ただし、自国開催の大会で複数タイトルの日本代表が不在となる事態は、日本のeスポーツが国際競技の枠組みのなかでどう位置づけられ、どれだけのリソースを配分されるのかという、制度設計上の課題を可視化したともいえます。

注目は小学5年生のぷよぷよ代表

日本代表のなかで大きく注目を集めているのが、ぷよぷよeスポーツ代表のゆうき選手(栗原悠輝)です。東京都出身、東京ヴェルディeスポーツ所属の小学5年生で、日本代表として史上最年少での出場になると報じられています。

ゆうき選手(栗原悠輝):東京ヴェルディeスポーツ所属、ぷよぷよeスポーツ代表。

実績も十分です。全国都道府県対抗eスポーツ選手権では2023 KAGOSHIMA、2024 SAGAの小学生の部を連覇し、Puyo Puyo Global Ranking MatchやGygaCrysta ぷよぷよグランプリ ファイナルでも優勝を収めています。

HPSC ESPORTS LABの発表会でデモンストレーションを行った際には、「思っていたよりも相手の盤面を見ていなかった。緊張していたはずなのに、心拍数もそんなに高くなかった」と、計測データから得た気づきを自分の言葉で語っていました。アイトラッキングや心拍計測といった設備が、選手本人の感覚と実際のプレイのずれを埋める道具として機能している一例です。ぷよぷよeスポーツの魅力については「大連鎖が楽しいところ」と話し、「ずっと昔から1位になることを目標にやってきたので、近づいてきてうれしい」とも語っています。

対戦格闘団体戦の3名も、それぞれのタイトルで国内トップクラスの実績を持つ選手です。Street Fighter 6のひぐち選手(ZETA DIVISION)、鉄拳8のNOBI選手(Team YAMASA)、THE KING OF FIGHTERS XVのSCORE選手(AMATERASU GAMING)という構成で、3タイトルの合計成績でメダルを争う団体戦形式となります。個人の実力に加えて、異なるタイトルの選手が一つのチームとして機能する必要があるという、格闘ゲームとしては特殊な設計です。

決勝が行われる9月26日は、同日午前にぷよぷよeスポーツの決勝トーナメントから決勝までが組まれています。日本にとってメダルの可能性が高いとみられる2種目が同じ日に集中する形で、大会中盤の山場になりそうです。

制度としてのeスポーツが問われる10日間

今回のアジア競技大会は、日本のeスポーツにとっていくつもの「初」が重なります。自国開催の国際総合競技大会での正式競技としての実施、ナショナルトレーニングセンターを使った代表強化、そして開催国でありながら一部タイトルに代表を派遣しないという事態も、また初めてのことです。

競技面の成果はもちろん重要ですが、それ以上に、この10日間は日本のeスポーツが公的なスポーツの制度のなかでどこまで扱われるようになったのかを測る機会になります。HPSC ESPORTS LABが大会後に各種世界大会の出場選手へ開放される予定である点も、単発の強化策で終わらせない意思の表れと見ることができます。

国内のeスポーツ市場は、JESUのデータ年鑑『日本eスポーツ白書2025』によれば2024年時点で推計161億円、2026年には200億円を超えると予測されています。市場が広がる一方で、国際大会での実績と、それを支える制度をどう積み上げていくかという課題は残されたままでした。

9月23日、Aichi Sky Expoの展示ホールDで最初の試合が始まります。ジャカルタの金メダルから8年、杭州でのメダルなしから3年。国のトレーニング拠点まで動員して臨む自国開催の舞台で、日本代表25名がどんな結果を残すのか。そしてその結果が、次の制度設計にどうつながっていくのか。10日間の戦いが持つ意味は、メダルの数だけでは測れないものになりそうです。

(C) esports-spirit.com/ ©JESU

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