
7月23日、一般社団法人日本eスポーツ協会(JESU)は「全国都道府県対抗eスポーツ選手権 2026」の開催概要と競技タイトルを発表しました。8回目となる今年度大会は「全国都道府県対抗eスポーツ選手権 2026 オンライン - Road to the NEXT -」の名称で、12月12日(土)・13日(日)にオンラインで実施されます。
同大会はJESUが主催する国内最大級の公式大会で、47都道府県の代表選手が複数の競技タイトルの総合成績を競い、「eスポーツ最強の都道府県」を決定する形式を取ってきました。2019年の第1回大会以降は、その年の国民スポーツ大会(旧・国民体育大会)の開催地と紐づけて大会名と会場が設定されてきましたが、今回はその枠組みから離れることになります。
JESUは今年度大会を「時代に合わせた新たな大会への移行に伴う特別大会」と位置づけており、単年度の開催形式の変更にとどまらない転換点であることを自ら示唆しています。
大会概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 大会名 | 全国都道府県対抗eスポーツ選手権 2026 オンライン - Road to the NEXT - |
| 日程 | 2026年12月12日(土)、13日(日) |
| 開催形式 | オンライン |
| 主催 | 一般社団法人日本eスポーツ協会(JESU) |
| 正式競技 | eFootball™、グランツーリスモ7、パズドラ |
| エキシビション | ぷよぷよeスポーツ |
| 開催回 | 第8回 |
予選の参加方法、大会の視聴方法、エキシビションマッチの追加については、JESUは「決定次第ご案内いたします」としており、現時点では未発表です。
競技タイトルは3種目、グランツーリスモ7が正式競技に昇格
今回の発表で目を引くのが、競技タイトルの入れ替えです。
前回の2025 SHIGA大会では、正式競技がeFootball、パズドラ、ぷよぷよeスポーツの3タイトル4部門で、グランツーリスモ7と鉄拳8はエキシビションマッチとして実施されていました。2026年大会ではグランツーリスモ7が正式競技に昇格し、代わってぷよぷよeスポーツがエキシビションに移ります。鉄拳8は現時点で発表されたラインナップに含まれていません。
グランツーリスモ7は2023 KAGOSHIMA大会ではU-18の部・一般の部の2部門で正式競技として実施されており、正式競技への復帰という形になります。ぷよぷよeスポーツは第1回大会から一貫して正式競技を務めてきたタイトルであり、小学生の部を通じて幅広い年齢層の参加窓口としても機能してきました。この入れ替えの理由について、JESUからの説明はありません。
「国スポ開催地での現地開催」という枠組みからの離脱
第1回大会は2019年10月5日・6日、「いきいき茨城ゆめ国体・いきいき茨城ゆめ大会」の文化プログラムとして、茨城県つくば市のつくば国際会議場で開催されました。競技タイトルはeFootball ウイニングイレブン2020、グランツーリスモSPORT、ぷよぷよeスポーツの3種目でした。以降、大会名には開催地の名前が入り、その年の国民スポーツ大会の開催都道府県で本大会を実施するという形が定着していきます。
2026年の国民スポーツ大会は青森県で開催されます。「青の煌(きら)めきあおもり国スポ・障スポ」の愛称で、第80回国民スポーツ大会・第25回全国障害者スポーツ大会として、本大会の会期は9月3日(木)から10月20日(火)まで。青森県での国スポ開催は1977年の第32回国民体育大会(あすなろ国体)以来、49年ぶりとなります。
しかし今回のJESUのリリースには青森県への言及はなく、大会名からも開催地名が消えました。従来のパターンに沿えば「2026 AOMORI」となるはずだった大会が、「2026 オンライン - Road to the NEXT -」という名称に置き換わった形です。
なお、オンライン開催そのものは初めてではありません。コロナ禍の影響を受けた第2回・2020 KAGOSHIMA大会は、12月26日・27日の本大会を含めて全5タイトル9部門をオンラインで実施しており、開催県である鹿児島県の代表のみが鹿児島市天文館の会場から参加する形を取りました。ただし当時は感染症対策という外部要因によるものです。今回は大会の在り方の見直しを理由に挙げている点が、性質として大きく異なります。
翌年の第3回・2021 MIE大会では、都道府県代表決定戦とブロック代表決定戦をオンラインで実施したうえで、10月16日・17日の三重本大会を現地開催する形に戻っています。
直近4大会で進んでいた規模の縮小
今回の判断を理解するうえで参考になるのが、直近4大会の規模の推移です。
| 2022 TOCHIGI | 2023 KAGOSHIMA | 2024 SAGA | 2025 SHIGA | |
|---|---|---|---|---|
| 日程 | 10月15・16日 | 11月25・26日 | 12月14・15日 | 11月22・23日 |
| 会場 | 日環アリーナ栃木(宇都宮市) | センテラス天文館(鹿児島市) | SAGAアリーナ | プロシードアリーナHIKONE(彦根市) |
| 正式競技 | 6タイトル9部門 | 6タイトル8部門 | 4タイトル5部門 | 3タイトル4部門 |
| 本大会出場選手 | — | 86人 | 75人 | 46人 |
| 総合優勝 | 東京都 | 東京都 | 東京都 | 千葉県 |
正式競技のタイトル数は6から4、3へと段階的に減り、本大会に出場する都道府県代表選手の数も86人から46人へとほぼ半減しています。
2022 TOCHIGI大会ではeFootball、グランツーリスモ7、Shadowverse、パズドラ、ぷよぷよeスポーツ、プロ野球スピリッツAの6タイトル9部門が実施されていました。その後プロ野球スピリッツAとShadowverseがラインナップから外れ、2024 SAGA大会まで残っていたIdentity V 第五人格も2025 SHIGA大会で姿を消しています。第1回の2019 IBARAKI大会は3タイトルでのスタートだったため、規模の面ではおおむね出発点に近い水準まで戻った形です。
予選参加者数については、JESUの発表によると2023年が約7万人、2024年が40万人以上、2025年が約23万人となっています。ただし年ごとの集計基準は公表されていないため、この数字を単純に前年比較することは適切ではありません。特に2023年から2024年にかけての急増は、集計方法の変更が影響している可能性があります。
一方で、大会そのものの盛り上がりは維持されていました。2025 SHIGA大会では、開催地の滋賀県と3連覇中の東京都が125ポイントで並ぶ接戦のなか、最終日にパズドラとeFootballを制した千葉県が逆転で総合優勝を果たしています。千葉県にとっては初の総合優勝で、東京都の4連覇を土壇場で阻止する劇的な決着でした。
歴代の総合優勝都道府県
| 回 | 年 | 大会名 | 総合優勝 |
|---|---|---|---|
| 第1回 | 2019 | 2019 IBARAKI | 茨城県 |
| 第2回 | 2020 | 2020 KAGOSHIMA | 大阪府 |
| 第3回 | 2021 | 2021 MIE | 大阪府 |
| 第4回 | 2022 | 2022 TOCHIGI | 東京都 |
| 第5回 | 2023 | 2023 KAGOSHIMA | 東京都 |
| 第6回 | 2024 | 2024 SAGA | 東京都 |
| 第7回 | 2025 | 2025 SHIGA | 千葉県 |
第1回は開催地の茨城県が制し、その後は大阪府が2連覇、東京都が3連覇と、都市圏の選手層の厚さが結果に表れる傾向が見られます。2025年の千葉県の初優勝は、この構図に変化が生じた大会としても記録されます。
「持続可能性」という言葉の背景
JESUは今回の判断について、「生涯スポーツ」としてのeスポーツ定着を念頭に新しい大会の在り方を検討してきたとしたうえで、「大会の持続可能性をさまざまな観点から検討した結果」と説明しています。これ以上の詳細な理由は示されていません。
ここで押さえておきたいのが、この大会が長く置かれてきた国民スポーツ大会という枠組み自体が、現在見直しの議論の途上にあるという点です。
2024年4月8日、全国知事会長を務める宮城県の村井嘉浩知事は記者会見で、開催地の財政負担の大きさを理由に「個人的な考えとして、廃止も一つの考え方ではないか」と発言しました。この発言を受けて鳥取県、岩手県、茨城県の知事らも、現行のままの継続は困難との見解を示しています。全国知事会は3巡目の国スポについて、少子化や人口減少、地方財政の逼迫といった環境変化を踏まえ、大会の意義や在り方をゼロベースで再検討すべきだとの立場を取っています。
日本スポーツ協会(JSPO)にも「国スポ改革タスクフォース」が設置され、2026年2月27日には第3回会合が開かれました。開催時期や期間を柔軟に設定して競技会を分散させ、開催地に集中する負担を軽減する方向が検討されています。なお、夏季の本大会は2034年まで、冬季大会は2028年まで開催地が決まっているか開催要望が出されており、国スポが近い将来に廃止される見込みはありません。
JESUはこれらの動きを今回の決定理由として挙げてはいません。あくまで別個の話として整理されるべきものですが、母体となる大会と、その文化プログラムから生まれたeスポーツ大会が、ほぼ同じ時期にそれぞれ持続可能性を課題として掲げているという構図は、国内eスポーツの制度面を考えるうえで見過ごせない事実です。
未発表のまま残された論点
「Road to the NEXT」という副題が付いた以上、2027年以降に何らかの新しい大会形態が用意されていることは読み取れます。しかし現時点でJESUからその具体像は示されていません。今後の続報で注目すべき点を整理します。
- 2027年以降の「新たな大会」の形式:都道府県対抗という枠組みは維持されるのか、別の競技単位に移行するのか
- 開催地の扱い:国スポとの連動を完全に切り離すのか、別の形で地域開催を続けるのか
- 競技タイトルの選定基準:正式競技とエキシビションの入れ替えがどのような考え方で行われているのか
- 予選の規模と参加方法:これまで数十万人規模を集めてきた予選をオンラインでどう設計するのか
- ぷよぷよeスポーツと鉄拳8の今後:エキシビション移行や不採用が一時的なものなのか
- 賞金・賞品:過去大会では優勝賞品としてゲーミングPCの贈呈も行われていた
JESUは2025年8月に団体名称を「日本eスポーツ連合」から「日本eスポーツ協会」へ変更しており、組織としても節目を迎えています。2026年3月に発売されたデータ年鑑『日本eスポーツ白書2025』では、2024年の国内eスポーツ市場規模が推計161億円(前年比9.9%増)、競技人口419万人、ファン数約967万人と報告され、2026年には市場規模が200億円を超えるとの予測が示されました。市場が拡大局面にあるなかで、国内最大級の公式大会が形を変えるという構図です。
現地会場での熱気やご当地の盛り上がりが、オンライン開催でどこまで再現できるのかは未知数です。とはいえ、47都道府県すべてが参加できる場を持続的に維持することと、大規模な現地開催を毎年続けることの間には、確かに緊張関係があります。今回の「特別大会」がその答えを探る一年になるのかどうか。まずは12月12日・13日のオンライン大会がどのような形で運営され、そして「NEXT」として何が発表されるのか。国内eスポーツの土台を支えてきた大会の次の一手に、注目が集まりそうです。
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