ウクライナ語によるeスポーツ・ストリーミングが急拡大 戦争との関係は?

ロシア・ウクライナ戦争は、2022年2月24日に両軍が全面衝突して以降、戦地だけではなく世界中に様々な影響を及ぼしており、それはeスポーツも例外ではありません。

FPSの『VALORANT』や『Apex Legends』など、一部で大会が中止や延期されたものもあります。

また、著名なeスポーツチームや選手たちが戦争反対を表明し、ウクライナで苦しむ人々を支援する立場を明確にしています。このようなアクションは、世界中のスポーツ選手や著名人が行っており、eスポーツ界でも同調する動きが見られます。

サッカーのウクライナ・プレミアリーグは無期限中止となり、ウクライナ代表は国内での活動がままならず、特例により国外で強化を行いワールドカップ予選に臨みました。

戦火では毎日が生きるか死ぬかの瀬戸際であり、正直スポーツどころではないのです。

しかし、eスポーツにおけるストリーミングでは、興味深い傾向を見ることができます。

(上記チャート:ウクライナ語のストリーミング視聴時間の推移『Twitch』『Trovo』)

ストリーミングが4倍 瞬間最高視聴者数は10倍に

ストリーミングサービス『Twitch』や『Trovo』のウクライナ語ユーザーが、3月を境に急増しているのです。これは何を意味するのでしょうか。ストリーマーも視聴者も右肩上がりになっています。

2022年前半の6カ月で、ウクライナ語によるTwitchのストリーミングは320万時間以上も視聴され、Trovoの視聴は約64万9000時間でした。Twitchの 1月と6月を比較すると、ウクライナ語での視聴時間、ユニークチャンネル、平均視聴者数などの指標が約4倍になっており、瞬間最高視聴者数は10倍にもなっています。

それ以前のデータは、ほぼ横ばいでした。この変化の時期が3月初旬頃だったことから、社会情勢が影響を与えたことが推測できます。2月下旬から3月初旬まではむしろストリーミングがやや減少しました。この期間は、多くのストリーマーが避難をする必要に迫られた可能性があると『Esports Charts』は指摘しています。

最初の1週間は戦闘がすぐに収束するのか長期化するのか誰にも見通せず、人々は情勢を見守りつつも、不測の事態に備えるなど生活の転換期だったことが、ストリーミングのデータとなって表れていることが考えられます。

平時でも有事でも適応するeスポーツ

人気スタジオWePlay Esportsの大会「BLAST Premier Spring 2022 Finals」では、ウクライナ語の瞬間最高視聴者数が30,400人になりました。一方で、侵攻開始前の最高は17,700人でした。

スポーツとは、世の中が平和だからこそできるものです。しかし、戦争が激化してウクライナのeスポーツは活況となりました。

理由はいくつか考えられます。戦争が激化する前のウクライナでは、地域にもよりますがウクライナ語とロシア語が共存していました。しかし、一部でロシア語の使用を差し控えてウクライナ語を使うようにする動きが出てきているのです。

しかし、それだけではありません。ウクライナ語でストリーミングを行うチャンネルが次々と立ち上がっているのです。

ウクライナ語でストリーミングされるTwitchのチャンネル数は3月1日時点で119でしたが、 6月23日には733にまで増加しています。

(下記チャート:ウクライナ語のチャンネル数の推移『Twitch』『Trovo』)

チャート:ウクライナ語のチャンネル数の推移『Twitch』『Trovo』

Twitchの人気ウクライナ語コンテンツは、eスポーツのゲームタイトルでもある『CS:GO』(Counter-Strike: Global Offensive)や『Dota 2』などが挙げられます。

またTrovoのウクライナ語チャンネルでは『World of Tanks』『PUBG Mobile』『PUBG: Battlegrounds』などが人気です。

主要なスタジオのWePlay EsportsやMaincastに加えて、eスポーツチームもウクライナ語ストリーミングの増加に寄与しています。

NAVI OLDとNAVI 2022 Dota 2のショーマッチでは、小児病院のためにチャリティー募金も行われました。

ストリーミングは社会インフラ 経済活動や募金活動に活路

戦争により、多くの人々の生活が一変し、生きる糧が失われました。地下シェルターから出られない人もいます。戦禍では、平時のような経済活動がままならないため少しでも収入を得ようと、オンラインでストリーミングを行っている人もいるのです。様々な募金活動も行われています。

ストリーミングは戦況についての情報発信や情報収集のためにも使われているようです。

数年前には新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックが世界を襲い、eスポーツも打撃を受けました。しかし、全く身動きが取れなくなった伝統スポーツとは異なり、オンラインに活路を見出すことができました。

eスポーツやストリーミングは、リアルの世界で有事の際に人々を支える社会インフラになりうるということが、これらの事例から確認できるでしょう。

なお、ロシア・ウクライナ戦争の戦況は両軍ともに一進一退を繰り返し長期化の様相を呈しています。戦禍でも挫けないeスポーツが平和のメッセージを送り続けて、一刻も早く戦争が終結することを願うばかりです。

(C)©Esports Charts

ゲームを仕事に。チャンスをみんなに。eスポーツ選手紹介サービス「ゲーマーズ・ナビ」
URL: https://www.gamers.work/

参照:
https://streamscharts.com/news/ukr-streaming-during-war

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