【格闘ゲーム】EVO 2026が6月26日に開幕!サウジ資本の完全買収で参加者32%減、岐路に立つ格ゲー最大の祭典

世界最大の格闘ゲーム大会「EVO 2026」が、6月26〜28日にアメリカ・ラスベガスで開幕します。12タイトルに5,774名のプレイヤーがエントリーしていますが、この数字は過去最高を記録した2024年の10,224名からわずか2年で約44%減少したことを意味しています。背景にあるのは、サウジアラビアの国家プロジェクト「Qiddiya City」による完全買収、開催時期の変更、そしてコミュニティの分断です。1996年にカリフォルニアのゲームセンターから始まった草の根の祭典は、いま大きな転換期を迎えています。

コミュニティの手から企業の手へ:EVOの所有権の変遷

EVOの歴史は、1996年にカリフォルニア州サニーベールのゲームセンター「Sunnyvale Golfland」で開催された「Battle by the Bay(B3)」に遡ります。主催者はTom CannonとTony Cannonの双子の兄弟で、参加者はわずか約40名。ストリートファイターシリーズを中心としたローカルな対戦会でした。

この小さな大会は回を重ねるごとに規模を拡大し、2002年に「Evolution Championship Series(EVO)」に改称。2005年にはラスベガスに拠点を移し、世界中から格闘ゲーマーが集まる国際大会へと成長しました。EVOの特徴は、プロ・アマチュア問わず誰でも参加できるオープントーナメント形式にあり、「プレイヤーによる、プレイヤーのための大会」というコミュニティ主導の精神が長年にわたって支持されてきました。

しかし、2021年3月にソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)とeスポーツ企業RTSが共同でEVOを買収したことで、コミュニティ主導の運営体制は終わりを告げます。以降、EVOの所有権は短期間で複雑な推移を見せることになりました。

時期 出来事
2021年3月 SIEとRTSが共同でEVOを買収
2024年 サウジアラビアのQiddiya CityがEVOのグローバルパートナーに就任
2025年8月 SIEが保有株をインドのNODWIN Gamingに売却、Qiddiya CityがRTSへの出資を拡大
2025年9月 Qiddiya Investment Company(QIC)がRTSを完全子会社化
2026年2月 RTSがNODWINの保有株を取得し、EVOはQiddiya City傘下の100%サウジ資本に

Qiddiya Cityは、サウジアラビアの政府系ファンド「Public Investment Fund(PIF)」が出資するリヤド近郊の大規模エンターテインメント都市開発プロジェクトです。EWC(eスポーツワールドカップ)やGamercon、Savvy Gamesなど、サウジ資本によるeスポーツ・ゲーム産業への投資は近年急拡大していますが、EVOの完全買収はそのなかでも象徴的な案件といえます。格闘ゲームという、ゲームセンター文化に根ざした草の根コミュニティの「顔」ともいえるイベントが、国家資本の傘下に入ったためです。

参加者数の推移:2年で半減

EVO 2026の参加者数は、過去2年間と比較すると大幅な減少が確認できます。

EVO 2024 EVO 2025 EVO 2026 2025→2026 変化率
ユニーク参加者数 10,224名 8,541名 5,774名 -32.4%
開催月 7月 8月 6月

主要タイトル別の推移を見ると、減少の規模がより明確になります。

タイトル EVO 2024 EVO 2025 EVO 2026 2025→2026
ストリートファイター6 4,228名 2,414名 -42.9%
鉄拳8 4,646名 2,521名 1,354名 -46.3%
GUILTY GEAR -STRIVE- 1,508名 912名 -39.5%
GRANBLUE FANTASY Versus: Rising 936名 466名 -50.2%

一方で、今年新たにラインナップに加わったタイトルも存在します。Riot Gamesの新作格闘ゲーム『2XKO』が1,080名、ストリーマーLudwigのOffbrand Gamesが開発した『Rivals of Aether II』が1,022名のエントリーを集め、いずれもEVO初参戦ながら登録者数でGUILTY GEAR -STRIVE-を上回る結果となっています。

2026年の全12タイトルのうち、登録者数上位6タイトルがラスベガスコンベンションセンターのアリーナステージでTOP8ファイナルを実施し、残る6タイトルはショーケースステージでの開催となります。日曜日のメインステージには2XKO、鉄拳8、そしてストリートファイター6が配置されており、SF6のTOP8ファイナルは現地時間18時30分から開始予定です。

参加者数の減少には、複数の要因が絡み合っています。EVOのゼネラルマネージャーであるRick Thiher氏は、主な要因として2つを挙げています。1つは開催時期の変更です。EVOは長年7〜8月に開催されてきましたが、2026年は6月下旬に前倒しされました。これにより登録期間が圧縮され、多くの参加者の旅行計画と競合したとThiher氏は説明しています。もう1つはラスベガスの旅費高騰で、同氏は「6月の開催時期がみなさんの年間の旅行計画に合わなかったこと、そして2026年の旅費高騰が重なり、今年の素晴らしい新作ゲームやバランス調整に集まりにくくなった」とコメントしています。

しかし、コミュニティのあいだでは、これらの要因だけでは説明がつかないという見方が少なくありません。特に注目されたのが、著名なFGCキャスター・アナリストであるSajam氏のボイコット表明です。Sajam氏は「2014年からEVOに通ってきたが、買収のせいで今は行かない」と公言し、その理由を「いかなる政府とも直接的に結びつくことに抵抗がある」と説明しました。さらに「EVO Vegas、EVO France、EVO Singapore、そしていずれサウジアラビアで開催されるであろうEVOにも行かない」と、サウジ資本下で開催されるすべてのEVOイベントへの不参加を宣言しています。Sajam氏自身も「経済的には悪い決断だ」と認めており、キャスターとしてのキャリアに直接影響する覚悟のうえでの判断であることを強調しました。

Sajam氏の表明はFGC内で大きな反響を呼び、同様に不参加を表明するプレイヤーや関係者も現れました。「スポーツウォッシング」、すなわち人権問題を抱える国家がスポーツやeスポーツへの投資を通じて国際的なイメージ向上を図る行為への批判が、その根底にあります。ボイコットの影響がどの程度参加者数の減少に寄与したかを正確に測定することは困難ですが、スケジュール変更と旅費高騰だけで32%減・SF6で43%減という急激な落ち込みを説明するには無理があるという指摘は、複数の海外メディアでも取り上げられています。

EVO 2026をめぐるもう一つの話題が、『Rivals of Aether II』の登録数に関する騒動です。

Rivals of Aether 2

同作の開発元Offbrand Gamesの創業者でもある人気ストリーマーのLudwig(ルードヴィッヒ)氏は、EVO 2026でRivals of Aether IIを大きく盛り上げたいと考え、独自のキャンペーンを展開しました。当初は自身を1対1で倒したプレイヤーにEVOの参加パスを無償提供すると告知していましたが、最終的にはRivals of Aether IIにエントリーするだけで3日間のイベントパスを無料で受け取れるという形に拡大したのです。

結果として同作の登録者数は1,022名に達し、GUILTY GEAR -STRIVE-を上回ってアリーナステージの4番目の枠を獲得しました。前年のEVO 2025ではExtended Lineup(拡張ラインナップ)の一部として参加しており、登録数は約半分程度だったことを考えると、倍増以上の伸びを見せたことになります。

しかし、FGCのあいだでは「登録数を金で買った」という批判が噴出しました。無料パスを受け取る目的でRivals of Aether IIにエントリーし、実際には他のタイトルにしか出場しないプレイヤーが多数いるとの指摘です。Ludwig氏自身も「利用されたのは分かっている。コードを転売した人もいるし、プレイする気がないのに登録した人もいる。でも、Rivals 2史上最大のイベントにするためなら、それは払う価値のある代償だ」と認めています。

この一件は、参加者数の全体的な減少傾向のなかで、数字の持つ意味そのものに疑問を投げかけるエピソードともなっています。

EVO Japan 2026との対照的な結果

なお、EVO 2026の参加者減少を論じるうえで見落とせないのが、EVO Japan 2026の存在です。2026年5月1〜3日に東京で開催されたEVO Japanでは、SF6部門に7,168名がエントリーし、ギネス世界記録「単一タイトルにおける最大規模の格闘ゲームトーナメント」に認定されました。EVO JapanもEVO Vegasと同じくQiddiya City傘下のRTSが運営しています。にもかかわらず日本での大会が過去最高の参加者数を記録した一方、ラスベガスでは大幅減少という対照的な結果が出ている点は興味深いところです。日本のFGCコミュニティでは所有権の問題に対する反応が欧米とは異なること、国内大会ゆえの渡航コストの低さ、そしてEVO Japanが確立してきた独自のブランド力など、複数の要因が考えられます。

EVO 2026の注目ポイント

こうした議論の渦中にあるEVO 2026ですが、競技面での見どころは豊富です。

最大の注目は、Riot Gamesが手がける新作2D格闘ゲーム『2XKO』のEVOデビューです。1,080名のエントリーを集めて登録者数3位につけており、日曜日のアリーナファイナルでオープニングを飾ります。リーグ・オブ・レジェンドのチャンピオンたちが格闘ゲームとして対戦する同作は、2対2のタッグバトルを基本とする独自のシステムを採用しており、FGCに新たなプレイヤー層を呼び込めるかが注目されます。

2XKO バナー

SF6は参加者数こそ減少しましたが、4年連続でEVO登録者数1位の座を維持しています。5月のCombo Breaker 2026ではTeam FalconsのXiaohai選手が敗者側からの逆転優勝を果たしたばかりで、CPT 2026シーズンのポイントレースが本格化するなか、EVO 2026の結果はCapcom Cup 13への道にも直結します。

鉄拳8も2年連続で登録者数2位を維持し、1,354名がエントリーしています。パキスタン勢の席巻が続く鉄拳シーンで、Combo BreakerのFarzeen選手とATIF選手による同門対決の記憶も新しいなか、TWT 2026のポイントを賭けた戦いが繰り広げられます。

日程 時間(PDT) タイトル
6月27日(土) 10:00 GRANBLUE FANTASY Versus: Rising
6月27日(土) 14:00 GUILTY GEAR -STRIVE-
6月27日(土) 18:00 Rivals of Aether II
6月28日(日) 10:00 2XKO
6月28日(日) 14:00 鉄拳8
6月28日(日) 18:30 ストリートファイター6

FGCの「魂」はどこへ向かうのか

EVOをめぐる一連の動きは、eスポーツ業界全体にとっても示唆に富む事例となっています。

サウジアラビア資本のeスポーツ進出は、EVOに限った話ではありません。EWC 2026は賞金総額7,500万ドルを掲げてパリで開催される予定であり、Capcom Pro TourやTekken World Tourといった格闘ゲームの公式ツアーもEWCと密接に連携しています。Sajam氏が指摘したように、格闘ゲームの競技シーンとサウジ資本との関わりはEVO単体の問題にとどまらず、シーン全体に広がりつつあります。

一方で、EVOの参加者減少をもってFGCの衰退と結論づけるのは早計でしょう。EVO Japan 2026がギネス記録を樹立したこと、Combo Breaker 2026がスト6・鉄拳8ともに1,000名超のエントリーを集めたこと、そして世界各地で草の根のオフライン大会が活発に開催され続けていることは、格闘ゲームコミュニティそのものの熱量が失われていないことを示しています。減少しているのはEVOへの参加者であって、FGCの規模ではないという見方もできます。

EVOが30年近い歴史のなかで培ってきた「誰でも参加できる、プレイヤーのための祭典」という理念が、新たなオーナーシップのもとでどのように維持されるのか。あるいは、EVOとは異なる形でFGCの「ホーム」となるイベントが台頭するのか。6月26日に幕を開けるEVO 2026は、その答えの一端を示す大会になるかもしれません。格ゲーファンとしては、所有権の議論はさておき、まずはアリーナで繰り広げられるであろう熱い対戦に注目したいところです。

(C) esports-spirit.com/

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