史上初のIOC公式eスポーツ大会「オリンピックバーチャルシリーズ」東京2020

東京オリンピックが閉幕し様々な議論が噴出していますが、eスポーツと五輪についても正式種目に採用すべきか否かで、かねてから論争があります。2024年のパリ大会や2028年のロサンゼルス大会では、eスポーツの扱いはどのようになるのでしょうか。東京五輪を振り返りながら考えてみましょう。

史上初のIOC公式eスポーツ大会「オリンピック・バーチャル・シリーズ」

国際オリンピック委員会(IOC)は史上初の公式eスポーツ大会である「オリンピック・バーチャル・シリーズ」(Olympic Virtual Series:OVS)を東京五輪に先立つ2021年5月13日~6月23日に開催しました。

モータースポーツ、自転車競技、セーリング、野球、ボート競技の5種目のゲームが採用されました。

モータースポーツの競技団体は、国際自動車連盟(FIA)で、ゲームタイトルはポリフォニーデジタル(ソニーグループ)の『グランツーリスモ』(Gran Turismo)。

自転車は国際自転車競技連合が、Zwiftincの『ズイフト』(Zwift)を使って行いました。

セーリングの競技連盟はワールドセーリングで、ゲームタイトルはバーチャルレガッタSASの『バーチャルレガッタ』(Virtual Regatta)。

野球の競技連盟は世界野球ソフトボール連盟(WBSC)で、ゲームタイトルはコナミデジタルエンタテインメントの『eBASEBALLパワフルプロ野球2020』。

ボート競技の競技連盟はワールドローイングで、オープンフォーマットでした。

これらのタイトルは、伝統スポーツのバーチャルバージョンであり、IOCの考え方を反映しています。一部のタイトルを除き、一般的にeスポーツでメジャーなジャンルとは、やや趣が異なります。eスポーツで人気のMOBAやシューティング(FPS・TPS)といったジャンルとは、距離を置いているように見えます。

IOCのトーマス・バッハ会長は次のように述べています。「オリンピック・バーチャル・シリーズは、バーチャルスポーツの分野で新たな視聴者と直接、関わりを深めることを目的とした新しい独自のオリンピック・デジタル体験です。その構想は、オリンピック・アジェンダ2020+5やIOCのデジタル戦略に沿ったものです。特に若者にフォーカスして、スポーツへの参加を奨励し、オリンピックの価値観を普及させます」

東京五輪の公式スポンサーによるeスポーツ大会「インテルワールドオープン」

オリンピック公式スポンサーであるIntelは「インテルワールドオープン」(Intel World Open)を2021年5月15日~7月21日にオンライン開催しました。コロナ禍になる前は、東京のZepp DiverCityで行われる予定でした。ゲームタイトルは、日本そして世界で人気の『ストリートファイターV』や『ロケットリーグ』が採用され、こちらは一般的に知られるような形式のeスポーツ大会となりました。

格闘技や球技は、オリンピックでも実際に行われており、eスポーツであっても受け入れられる素地があるかもしれません。

この大会の賞金は総額50万ドル(約5000万円)でしたが、eスポーツがオリンピックで行われる場合、主催者からの賞金は用意されないでしょう。

IOCのバッハ会長は、東京五輪に関連する、これらの大会がeスポーツのオリンピック正式種目への採用に向けた布石だとは明言していません。しかし、実はアジア競技大会では、既にeスポーツが行われています。

ゲームのノウハウが少ないIOCも時代の潮流を意識しており、これらのeスポーツ大会を通じて知見を着実に深めているのです。「ゲームはスポーツではない」という考えを持つ保守的な層に配慮しつつも一般大衆の反応を確かめて、段階的にeスポーツを導入することを検討していると見ていいでしょう。

東京五輪は史上最もバーチャルなオリンピック体験

コロナ禍のため、東京五輪は多くの競技が無観客で行われ、史上初めて主にバーチャル観戦されたオリンピックになりました。

東京五輪では若者に人気のスケートボード、サーフィン、クライミングなどが新たに正式種目になりました。

今回の東京大会では、トランスジェンダーの女性選手が史上初めて出場しました。また、パラリンピックでは、障がい者が自分の体ではない義足を付けて、オリンピックを上回る記録を出すという事例も出てきています。スポーツの定義とは、一定ではなく時代とともに変わっていくのです。

パリ五輪ではブレイクダンスが新たに加わります。若者に人気のeスポーツを、今後オリンピックで活用しない手はないという気がしてきます。

「ゲームは家に籠もって体を動かさずに行うもの」という固定観念を持つ人もおり、オリンピックの典型的なイメージとは異なると考えるかもしれません。しかし、オリンピックは、世界的にテレビ視聴率が低迷し、オーディエンスが高齢化しつつあります。その対策として、若年層の新規開拓に注力しているのです。

2028年のロサンゼルス五輪で、eスポーツ正式採用なるか? 若年層の開拓が急務!

IOCは、2024年のパリ五輪でeスポーツを正式種目に採用することは時期尚早としていますが、eスポーツに関する何らかの催しが行われる可能性があります。東京五輪を見ても、地ならしが進められていることは確かです。

2028年のロサンゼルス五輪については、正式種目としての採用の可能性は、否定されていません。今後の動向に注目です。

ロサンゼルス五輪招致委員会のケイシー・ワッサーマン委員長はeスポーツ信奉者で、ゲーム大国のアメリカとしてもeスポーツが初採用される五輪になれば、功績が際立ちます。

まだ先のことで確定していませんが、ゲーム業界の進歩は目覚ましいものがあります。7年後には、また新たな景色が広がっていることでしょう。

五輪eスポーツは、どのように組織される?

では実際にeスポーツがオリンピックで行われる場合は、どのように組織されるのでしょうか。

まず、五輪種目になるには、世界に広く普及し、それぞれのeスポーツの国際統括団体が必要になります。

オリンピック向けのゲームタイトルが、どんどん増えていくと、既存のeスポーツタイトルとは異なる一大勢力になる可能性があります。

伝統スポーツにアマチュア競技とプロ競技があるように、eスポーツも「オリンピックeスポーツ」と「プロeスポーツ」に分化しながら進化していくことも考えられます。ゲーム開発者によっては、レース、球技、格闘技といったプロ・アマ両方で支持されるゲーム内容を意識することも予想されます。

課題をクリアできるか?「五輪の高潔さを堅守せよ」

オリンピックでeスポーツを行う上で、解決しなければならない課題もあるでしょう。

伝統的なスポーツはパブリックドメインで、特定の人物や団体が権利を持っているものではありません。権利を持っているとすれば、それは大会やチームの権利であって、スポーツそのものの権利ではありません。統括団体の許可を得ずとも、大会は開催できます。

一方で、eスポーツに用いるゲームは、特定の企業の商品のため、無断で使用することはできません。

オリンピックのライセンスを取得したゲーム開発も行われていますが、現状ほとんどの場合、オリンピックで、そのゲームの競技を行うことは想定されていません。

知的財産権(IP)は通常、パブリッシャーや開発会社が保有していますが、オリンピック種目に採用されればマーケティング効果は絶大で、ゲームがさらに売れることでしょう。

IPを持つ企業のなかには、オリンピック種目に選ばれるためにIOCの前に大枚を積むことをいとわないでしょうところも出てくるかもしれません。また、アメリカや中国といったオリンピックとゲーム両方で影響力のある大国が、採用されるゲームタイトルを巡ってロビー活動を行い、ゲーム会社が大会スポンサーになることも考えられます。

アマチュアスポーツが原点のオリンピックが、競技を選ぶ際にお金の誘惑に晒される可能性があります。そこでは、金銭的利益に左右されることなく、組織としてスポーツの精神と倫理を維持することができるか、試されることになるでしょう。

継続性をどのように担保する?

ゲームを五輪種目にする際のもう一つの課題は、継続性です。

伝統スポーツでは、時代とともにルールが変更されるということはありますが、文化として根付いています。オリンピックで行われるようなメジャーな競技が突然、消滅することは、まずありません。

ゲームも同様にアップデートされます。しかし、ゲーム業界は浮き沈みが激しく、ゲームタイトルが打ちきりになることは珍しくありません。オリンピックに出るために長年、トレーニングを続けてきたゲームが突然なくなり、オリンピック出場の夢が立ち消えになるという可能性も否定できません。子供たちに夢を与えるはずのオリンピックが、逆に夢を奪うリスクをはらんでいるのです。

ゲームタイトルを選定する際は、突然ゲームがなくならないように運営実績などが考慮されるかもしれません。

ゲーム開発を民間企業に丸投げで任せるのではなく、企業の経営状況や買収、事業撤退に左右されずにゲームを継続するための仕組みを整備する必要があるのではないでしょうか。IPの管理を確保するために、IOCが積極的にゲーム開発に関与する可能性もあるでしょう。

五輪のゲームタイトルは面白いのか?

そこで出てくる問は「公共性の高い団体であるIOCに、エッジがきいたゲームが作れるのか?」ということです。

いくらIOC肝いりといっても、ゼロから作って世界的に人気のゲームにまで育つという保証はありません。

IOCのバッハ会長は「誰かを殺すような暴力や差別を助長するゲームは、オリンピックの価値観と矛盾しているため、受け入れられません」と以前に発言しています。

そして「もちろん、あらゆる格闘技は人々の戦いにその起源があります。しかし、スポーツは文明化された表現です」と続け、格闘技については肯定的な見方を示しています。

IOCがゲーム開発に深く関与した場合には「正しい社会通念」の指摘が度々なされる可能性があります。そのため、クリエーターたちが萎縮して、自由な表現を控える可能性があります。

人気と運営実績のあるゲームが、IOCとパートナーシップを結ぶという形のほうが、労力やリスク低減の点では、はるかにメリットがあります。しかしオリンピックに使うだけのために、ドル箱であるゲームに関する権利や権限に制約が出てくることを企業側が、そう簡単にのむでしょうか。

このような理由から、闇雲にオリンピックのゲームを目指すということは行われず、特定のタイトルに絞って五輪種目入りを狙うことになるのではないでしょうか。

オリンピック正式種目のゲームタイトルを採用、または開発する際は、いずれにしてもIOCがゲーム内容をかなり神経質に審査することでしょう。東京五輪に対する世論の風当たりをみても、人々の揚げ足の取り方は、かなり強烈だったと言わざるをえません。その結果として、当たり障りのない、おとなしいゲームになってしまう可能性が考えられます。

【まとめ】五輪の正式種目にeスポーツが採用されるのは時間の問題

伝統スポーツは、オリンピック種目になることでステータスを得てきました。また、様々な競技がeスポーツとの関係を深めて、成長のきっかけにしようとしています。

伝統スポーツでは、オリンピアンであっても日々の生活が苦しいということも、しばしばです。eスポーツは、すでに経済的に大成功しており、プロゲーマーは巨額の報酬を得ています。

eスポーツは今後、オリンピック競技にならなくても、成長することでしょう。しかし、eスポーツが、世界的な祭典であるオリンピックの競技になることで「ゲームがスポーツになりうる」と、より多くの人々が考えるようになるでしょう。社会的に広くスポーツとして受け入れられるようになれば、eスポーツは今後さらなる発展も期待できます。

国際的なスポーツの祭典であるオリンピックですが、懸命に大会の若返りを図っています。eスポーツを軽んじると、時代に取り残される懸念がありますが、IOCは、それをしっかりと理解し、実行に移しているようです。

プロeスポーツでメジャーで、五輪でも有望なゲームのジャンルは「スポーツゲーム」「レースゲーム」「格闘ゲーム」が筆頭でしょう。

オリンピックの正式種目としてeスポーツが採用されるのは、時間の問題と言っていいのではないでしょうか。

(C)©International Olympic Committee ©FIA ©Polyphony Digital ©World Sailing ©Zwiftinc ©Virtual Regatta SAS ©World Baseball Softball Confederation ©Konami Digital Entertainment ©World Rowing

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