インドのeスポーツはモバイルゲームが主体となっているという点が日本と共通しています。総人口が多いだけに、スマートフォンユーザーの数も膨大でeスポーツなどゲーム業界の成長の原動力となっています。
インドは14億人を超え中国を抑えて人口が世界1位の国で、eスポーツも進境著しいものがあります。東西の大国にも翻弄されずに独自路線を進んでいるインドのeスポーツ事情について詳しく見ていきましょう。
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インドで人気のeスポーツゲーム
インドのeスポーツはモバイルファーストで『Battlegrounds Mobile India』や『COD Mobile』が人気を博しています。
PCタイトルではRiot Gamesの『Valorant』もこの地域で存在感を示しています。Riot Gamesは2023年に『Valorant』の国際大会をインドで初開催しました。Riot Gamesは NODWIN Gamingと提携して、世界的な Valorant ChampionsTour サーキットへの登竜門であるValorant Conquerors Championshipを主催。
インド企業のS8ULとGlobal Esportsはさらに、2023年に国内のVALORANTエコシステムの構築に焦点を当てたパートナーシップを発表しました。Valorant Esports APAC責任者ジェイク・シン氏も急速に台頭しているインドの重要性を強調。実際に、賞金も数百万ドル規模に跳ね上がっています。
『Counter-Strike: Global Offensive』(CS:GO)もインドで人気があります。インドのeスポーツ会社Skyesports は、2023 年にSkyesports Mastersと呼ばれるインド初のフランチャイズCS:GOリーグを立ち上げました。
また、『Garena Free Fire』の賞金総額は、2024年に2億2000万ルピー(約4億円)に増加すると予想されています。
インドのeスポーツ市場データ
インドでは2023年に180万人だったeスポーツプレイヤーが2024年には250万人に増加するとEY-Locoゲーマー調査は見積もっています。プロeスポーツチームの数は2023年の23から2024年には35に増加すると予想。また、ゲームストリーマーの視聴者数は、20~25% 増で推移しています。女性ファンは23%から25%に増加すると予想されています。
KPMGによると、インドには中国に次ぐ4億2000万人のオンラインゲーマーがいて、400社以上のゲーム会社があります。2022 年にはeスポーツプレイヤーは60万人で、2027年までに150万人に達すると予想されています。インドの著名なゲーマーには、Naman Sandeep Mathur、Tanmay Singh、Jonathan Jude Amaral、Payal Dhareなどがいます。
高額の賞金を獲得しているeスポーツプレイヤーも出てきました。『PUBG Mobile』のインド版『Battlegrounds Mobile India』(BGMI)を開発するKRAFTONはインド市場に1億5000万ドル(227億円)を投資する決定をしました。賞金プールは2000万ルピー(約3600万円)になるとのことです。
『Battlegrounds Mobile India』はインド1カ国向けに開発されたゲームながら、2023年の視聴時間は2681万時間で、世界のモバイルeスポーツの5位(Esports Charts)にランクインしています。これは、インドがいかに大きな市場かを如実に物語っています。
調査会社Grand View Researchは、2022年の世界のeスポーツ市場が18億8000万ドル(約2845億円)だったのに対して、インドのeスポーツ市場規模が2022年に1億6570万ドル(約250億円)だったと推定しました。
EY Indiaによるとインドはアジア最大のeスポーツ市場の1つで、2021年度の市場規模は30億ルピー(約54億円)で、2025年までに市場価値は1000億ルピー(約1800億円)に達すると予想しています。
そしてIMARC Groupは、インドのeスポーツ市場の年平均成長率は21.1%で、2028年までに5億2260万ドル(約800億円)に達すると予想しています。
インドのeスポーツ市場がものすごいスピードで成長していることを複数の調査が示しています。
eスポーツ環境は、まだまだこれから
世界のeスポーツと比較すると、インドの eスポーツ エコシステムは、まだ立ち上がったばかりで初期段階にあります。
PC・コントローラーに対応するインフラは未熟で、モバイルが主体となっています。
インド政府の立ち位置
『PUBG Mobile』は、サーバーが中国に置かれ、安全保障上の問題があるとして2020年10月にインド政府が遮断。『Garena Free Fire』 も同様に2022年2月に禁止となりました。両タイトルとも後にゲームの運営体制を刷新してインドで再度ローンチされました。
一方で、インドの青少年問題・スポーツ省は2022年にeスポーツをマルチスポーツイベントに認定し奨励しています。
eスポーツは、政府の教育機関のカリキュラムに正式にはほとんど入っておらず、私立の学校が中心にeスポーツのコースなどが立ち上がってきています。
インドのeスポーツ市場は、政府の規制や法律などが障壁となる場面もありますが、最終的には成長していく方向にあるでしょう。
インドのゲーム市場
eスポーツを含むインドのゲーム市場全体ではどうでしょうか。
Niko Partnersはインドのゲーム市場の収益が2023年に前年比 21.2%増の8億6800万ドル(約1313億円)と推定。5 年間の年平均成長率は17.2%で、2027年までに16億ドルに達すると予測しています。収益とともにゲーマー数も急速に成長しており、2023年に前年比12.1% 増の 4億 4400万人に達し、2027年には 6億 4120万人に到達し、5年間の 年平均成長率は10.1%と予測しています。
eスポーツ同様に、インドのゲーム市場も成長しています。
近隣サウジアラビアでeスポーツ投資が加熱
インドの近隣にあるサウジアラビアがオイルマネーを原資にしてeスポーツに巨額の予算を投じています。
2023年にサウジアラビアで開催された「Gamers8」の賞金総額は4500万ドル(約67億円)で、後継大会Esports World Cup 2024の賞金はそれを上回ると言われています。
また、サウジアラビアの国家開発基金(NDF)は、ゲームとeスポーツ分野を対象とした1億2000万ドル(約182億円)相当のの2つのベンチャー投資ファンドを創設。Merak Capitalは8000万ドル(3億リヤル:約121億円)、Impact46は4000万ドル(1億5000万リヤル:約61億円)をサウジアラビアのゲームやeスポーツ産業へ投資します。
サウジアラビアは、ゲームとeスポーツ産業において2030年までに133億ドル(500億リヤル:約2兆円)の経済効果を生むことを国家戦略に掲げています。
しかし、大会の開催地にはなっても、人口規模やゲーム開発では近い将来に世界基準とはならないかもしれません。
まとめ
インドはゲーム大国アメリカと同じ英語を操り、地球の丁度、反対側にあるため、24時間プロジェクトを回せる利点もあり、テクノロジー産業が成長しました。
最先端のゲーム開発で手を動かしてきたインドの技術者やクリエーターの練度は高いものがあり、人口規模の母数も大きいため人材は豊富です。米国企業などの下請けとして外貨を稼いできたインドですが、経済成長に伴い国内市場が大きくなり、今後はインド向けのゲーム開発にも注力していくようになるでしょう。
eスポーツは地域差がありますが、現在はアメリカと中国が世界の中心地になっていると見てよいでしょう。
一方で、インドは市場規模やゲーム開発からみても、可能性は十分です。将来的にeスポーツの一大中心地で、なおかつ世界最大規模の市場になるとみてほぼ間違いないでしょう。
地理的にも文化的にもインドに近い日本勢としても、大きな可能性が眠っているインドへの進出は魅力的なものとして映るかもしれません。
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