日本ではやっと最近、一般の話題にもなり始めたところ、といった状況のeスポーツですが、海外、特に北米のゲーム市場を語る上では、すでに欠かせない要素のひとつとなりつつあります。日本のeスポーツがさらに盛り上がることを期待する私たちとしては、海外eスポーツ事情は大いに気になるところ。そこで、日本のゲーム業界関係者に多数の読者を持つアナリスト記野直子氏のメールマガジン「「ベテランアナリストが解説する!10分でわかるゲーム産業ジャーナル」から、昨年2018年の北米eSportsニュースを抜粋して「eSports魂」読者にお届けします――

1.NewzooによるeSportsビジネスの展望

Think Global

Newzoo(※編集部注:海外のゲーム市場調査会社)が新たにeSportsビジネスに関する今後の展望を発表しました。

Newzooは「2021年に起こりうるeSportsの予言」として10個の予測を立てています。おもしろいので翻訳してみますね。2021年にはこうなってるらしいです!

(1)北米の主要メディア・コングロマリットはeSportsに関わる放映/配信の権利を取得している

(2)「eSports」はゲーム産業を「スポーツ」産業よりも大きなものへと発展させる

(3)eSportsがオリンピック種目となることは難しいが、オリンピックは違った形でeSportsに関わることになる

(4)eSportsが更に社会に浸透することで、あえて「eSports」とは呼ばれなくなる

(5)最も優秀なeSportsチームは1,000万ドル(約11億1,000万円)以上の収益を挙げるようになる

(6)モバイルeSportsの選手は一つの大会で優勝することで億万長者になる

(7)年間1億ドル規模の契約がメディアと結ばれる(放映権の獲得)

(8)eSportsタイトルの人気トップ3は国際大会へとつながる国内公式大会を開催するようになる

(9)企業価値に基づいて世界で最も価値のあるブランドのトップ10はいずれもeSportsのスポンサーとなる

(10)eSportsはラグビーよりも多くの収益を挙げる

昨年10月後半号のメルマガでもレポートしましたが、その時点ではNewzooが予測するeSports市場規模は2020年までにワールドワイドで15億ドル(約1,665億円)となっていました。最新の発表では、eSportsの市場規模が引き続き成長を続ける見込みであること、そして2021年までに17億ドル(約1,887億円)まで達するであろうと上方修正してきました!

この予測の背景には2021年までに北米の主要メディア・コングロマリットはeSportsに関わる権利(放映権、配信権、肖像権等)を取得しているであろう、という前提があります。近年はDisneyやComcast、AT&Tなど大手がすでにeSportsコンテンツの権利を取得することを検討しています。これらの企業が若いゲームユーザーを引きつけようと思えば、一層eSports業界における存在感を増していくことが想像されます。特に『Overwatch League(オーバーウォッチリーグ)』を放映しており、今後映像ストリーミングの開始を予定しているDisneyは、その中でも一歩先行していると言えるでしょうね。

また、Newzooは近い将来、「eSports」の市場規模が「スポーツ」のそれを逆転するであろうとしています。
既にeSportsを含むゲーム産業はスポーツ産業の規模を上回る速度で拡大しています。Newzooは2021年までに全世界のゲーム産業が1,801億ドル(約19.9兆円)規模の収益を挙げると予測しています。

さまざまなブランド(クルマとかアパレルとかも入ってくるでしょうね!)が投資し、若年層を更に惹きつけるであろうeSportsはその中でも大きな役割を占めます。より多くの企業がeSportsに参入しはじめ、ユーザーがeSports競技以外の時間にもeSportsコンテンツを消費することによって、ゲーム産業の中でeSportsの売上が占める割合は更に大きくなると言われています。

同時に、eSportsがオリンピック競技としては認められない(オリンピックについては下記3のところで書いていますので参考にしてくださいね)ながらも、オリンピックは違った形でeSportsに関わり続けると語っています。また、「eSports」が受け容れられることによって、あえて「eSports」とは呼ばず、ゲームごとに大会が計画されるだろうとしています。

ただし、2015年からeSportsの展望について予測しているNewzooは、2017年までにeSportsの市場規模が4億6,500万ドル(約516億1,500万円)に到達するとしていたこところ、2017年末に6億5,500万ドル(約727億500万円)に達したほか、「世界最大の「スポーツ」エンタテインメントであるWWE(ワールド・レスリング・エンタテインメント)の収益を上回る」や、「eSportsの放映権獲得が焦点となる」などの予測も見事に当てています。

さらにeSports大会の運営組織が不正防止の規則や措置を厳格化する必要がある、との予測も2016年にドーピング、賭博、八百長などを監視するEsports Integrity Coalition (ESIC)なる団体の発足によってNewzooの予想が大当たりとなりました。

唯一、Newzooが予測できていなかったのは、eSports競技が地域密着型チームの発足によってより地域に根ざしたものになった、ということです。Newzooとしては、『Overwatch League(オーバーウォッチリーグ)』がそのような取り組みをみせている反面、その他多くのeSportsリーグではそのような取り組みは見えていないことから、eSportsの傾向としては限定的であると態度を変えていません。笑。負けず嫌いのようです、Newzoo。

2.フロリダのゲーム大会で射撃事件

Electronic Arts(EA)の大ヒット商品『Madden NFL(マッデンNFL)』もeSports化が進んでおり、各地でトーナメントが行われています。2018年8月26日もフロリダ州ジャクソンビルのショッピングモールで正式なMadden NFL チャンピオンシップの予選として、大会が行われていたのですが、最終的に2名の死者と11人の負傷者を出す銃乱射事件がありました。容疑者は自殺してしまったので、本当の原因はわかりませんが、負けた腹いせなのか、この大会の優勝候補者を狙って撃ったらしいとの報道です。

実は私の知り合いの友人もそこに観客としていたらしいのです。いくら銃社会のアメリカでも。人がその場で射殺されたり、ケガを負わされたりというのは相当トラウマのようです…ではなぜアメリカは銃規制をしないのでしょうか?

今回は、ゲームソフトがスポーツものだったので社会からの叩かれ方は微妙だったのですが、これがアクションやFPSだったら、「暴力的なゲームが銃乱射を招く」とか言われるんだろーなと。

いやいや、「ゲームに負けてむかつく」ことを理由に人を殺す発想を持つような若者が合法に銃を所持できること自体が問題ではないのでしょうか?こういうことで「ゲームは暴力性を助長する」とか言われるのはホントに腹が立ちますね。

これだけモンスターを毎日暴力的に狩ってる(笑)日本国民ではありますが、こんな事件考えられませんよね?

3.オリンピックへの道は遠いのか?

最近行われたアジア競技大会でMOBAの代名詞とも言われる『リーグ・オブ・レジェンド』や『ウイニングイレブン2018』などが、公式オリンピック関連イベントで初のeSportsとしてデモ種目採用され話題になり、これからeSportsもオリンピックへ!などと語られることが多くなってきました。eSports後進国と呼ばれていた日本ですが、これらの流れを受け、バラバラだった3つのeSports団体がひとつにまとまり「日本eスポーツ連合」(英語名・Japan esports Union、略称・JeSU)となり、JOC(日本オリンピック委員会)への加盟を目指すことになりました。

昨年、WHOがネットゲーム依存を病気と定義したことにより、健康を害する恐れがあるゲームをスポーツと呼べるのか?との理由で、日本オリンピック委員会理事が「eSportsはスポーツと認めるべきではない」などと発言して物議をかもしたものの、国際オリンピック委員会(IOC)が2024年のパリ五輪でeSportsの採用検討との情報もあったため、時代の流れには逆らえないだろうと私自身も思っていました。

ところが!9月1日にAP通信が伝えた情報によると、IOCのバッハ会長が今回のアジア競技大会でのインタビューの中で「オリンピックのプログラムに暴力や差別を助長する競技が入ることはありえません。
eSportsはオリンピックの価値観に矛盾しており受け入れることはできません」と語り、現状ではeSportsがスポーツとしてこのような国際イベントに追加される見込みはほとんどないことを示唆した、らしいですよ…。
なんと。

この議論はきっとココで終了ではないはず。会長が交代とか、世の中がeSportsをスポーツとみなす流れが強固になるなど、IOC自体の考え方を変えざるを得ないことが起これば、この考え方が固定されることはないのではないかと考えますが、皆さんいかがでしょうか?

4.eSportsが雇用を生む

Newzooのところでも触れましたが、eSportsビジネスは拡大しています。大会運営はもちろん、プロ化が進み賞金が高額になってくると、その周りに「仕事」が発生します。経理、総務、マーケティング、事業開発、などなどがそのままeSports業界に求められるようになりますから、そこに新たな雇用が生まれるのです。

「このままではなくなる仕事」というネットサイトなど雇用が減っていくのではと煽る記事が出ていますが、結局新しい産業やサービスが雇用を吸収していくのです。そのために止まっていてはいけないのです。

新しいことを恐れず、新しいインフラを作っていくタイミングです。eSportsとはそんな社会的にもステキな要素を持っていることもお忘れなく。

本稿は、海外ゲーム事情に精通したゲームアナリスト記野直子氏の有料メールマガジン「ベテランアナリストが解説する!10分でわかるゲーム産業ジャーナル」Vol. 59(2018年9月前半号)から、ご本人の許可をいただいて、eSportsに関する内容を一部抜粋し、編集部で加筆修正したものです。

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著者プロフィール

記野直子

青山学院大学文学部卒業。日産自動車株式会社を経て、ゲーム好きが高じゲーム業界へ転身。コナミ株式会社、株式会社バンダイ、株式会社ソニー・コンピュータエンタテインメントにてゲームソフトの海外展開、ゲームソフト発キャラクター展開などに従事。2007年よりカイオス株式会社代表。最近は特に、日本の某ゲームパブリッシャーの北米展開のお手伝いで、日本と北米を行ったり来たりの毎日です。

ゲームを仕事に。チャンスをみんなに。eスポーツ選手紹介サービス「ゲーマーズ・ナビ」
URL: https://www.gamers.work/

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